 |

 |
 |
インドはカレー発祥の国と言われており、スパイスを多用した料理が毎回食卓に並ぶ。宗教上、鶏か羊のカレーが多いがベジタリアンフードも充実している。カレーの味には東西南北でそれぞれ特徴があり、主に北と南に大別される。
日本国内に存在するいわゆる『インド料理店』のほとんどは北インドの宮廷料理の流れを汲むものと認識して間違いないだろう。タンドリーチキンやナンなどは、タンドールという高価な料理釜を所有できる一部の裕福な階層だけが楽しめる料理なのである。かつてムガール帝国の支配下におかれていた影響で、ナッツ類や生クリームを多用したこってりと上品な味わいのカレーが生まれ、長い歴史を経て今の形へと変化したと言われている。
一般的に北インドのカレーはクミン・コリアンダーの香りが強く、その他のスパイスはシナモン、クローブ、ナツメグ、ガラムマサラなどを多く使う。油はギー、マスタードオイル、ごま油。酸味はトマトやヨーグルトで醸し出す。汁気が少ないのも特徴のひとつだ。主食は小麦。最も素朴なプルカ、全粒紛を水で練って平たく焼き上げたチャパティ、ギーを塗って何層かに折りこんで焼いたパラタ、油で揚げたプーリなど、種類は豊富だ。これらは総称してロティと呼ばれ、昔から良質の小麦の産地であったパンジャーブ地方を中心に広がった文化である。
一方、米は炒めたり炊きこんだりしてビリヤニなどにすることが多く、カレーのお供としては活躍の場が少ない。また、乳食文化であるためミルクを使った甘いデザートやヨーグルトで作るラッシーも有名。宮廷料理もいいがタリと呼ばれる一般家庭の定食スタイルで食事をすれば北インド料理を別の角度から味わうことができるだろう。
インドを旅した日本人で特に南インド地方の食事の美味しさに虜になってしまう人は非常に多い。南インドのカレーはマスタード、ヒング、アサフェチダの香りが強く、赤唐辛子、マスタードシード、黒胡椒などのスパイスで強烈な辛味をつけるのが特徴。独特の香りを醸し出すカレーリーフと呼ばれるハーブも欠かせない。また、ココナッツを多用し、ミルクやすりおろしをカレーに取り入れるだけでなく、ココナッツオイルとしても活躍している。酸味を出すのにはタマリンドを使用。主食は米。1日に3度食べる。インディカ米が中心でが中心で白いご飯がよく食卓に並ぶ。インドというとやせて乾いた土地というイメージがあるが、南インドのタミル・ナドゥ地方を流れるカーヴェリ河畔は、収穫期には様々な色の稲穂が一面に広がる。二期作、三期作で米を収穫できるほど肥よくな大地である。汁気の多いカレーが多いのはご飯によくあうように工夫されているからだろう。
また、豆食文化であるため、豆を基調としたサンバル、ラッサムという野菜スープのようなカレーがメジャーだが、これらをミールスと呼ばれる定食スタイルで楽しむことが多い。きれいな緑色のバナナの葉の上に、カレー、スープ、ご飯、付け合わせや惣菜の数々が盛られ、好きなように取り混ぜて口に運ぶのである。夏には40℃を越えるような風土だが、ヤシの木が生い茂ってのんびりした環境の中でのこうした食事は格別な体験に違いない。
インドがカレーの本場と言えども、近隣国にも本場にひけをとらない立派なカレー文化は存在している。
インドの南端に浮かぶ島、スリランカでは、日本と同じ『だし』の文化が根付いている。モルジブフィッシュという鰹節やアムチュールと呼ばれる梅干のようなものがよく使われる。一般的に肉や魚のカレーにはローストしたスパイス、野菜のカレーには生のスパイスを使うことが多い。ライスは長い米や赤い米などが炊かれ、見た目も変わっていて香りまで楽しめる。
インド北部のパキスタンでは汁気が多く喉を通りやすいカレーが常食。気候的にも腐敗が早いため、作りおきはせず手早く作ってすぐ食べる形が主流だ。国内でも特に山岳地では料理自体が男女問わず広く浸透しており、インドの高級レストランで働く腕のいいシェフの中には、この地域の出身者が意外と多いそうだ。
ネパールの料理の特徴は、ニンニク、タマネギ、トマトを多用すること。特にトマトやはシルクロードを使って西からネパール人がもたらしたものであり、料理には欠かせない。また、インドでは手に入らないスパイスやハーブやナッツ系の油を良く使う。油を少なめに作るせいかイメージと違って割と味にインパクトが薄く、その分、日本人の口に合う料理が多い。鶏がら、豚、野菜(豆など)でダシを取る作り方も日本人に馴染みやすい。普段の食事は、ダル・バートとよばれる定食スタイル。ダル(豆のスープ)とバート(ご飯)に独特のスパイスで煮込んだ野菜のおかず(タルカリ)とピリッと辛い漬け物(アチャール)が添えられる。ヒンズー教徒が多く、食べる時は神聖な右手の指三本でごはんにダル・タルカリを混ぜ合わせて見事に口に運ぶ。カトマンズに王宮文化を築いたネワール族などには独自の食文化があるが、モモやダルバートに代表されるような一般的な家庭料理は手軽な割に充分に深みがあって美味しい。
バングラデシュは貧しい国というイメージばかり先行しているが、食文化は多彩だ。カレーはじっくりと炒めたタマネギを基本としていて北インドにかなり近い味だが、川魚のカレーなど珍しい物もあって未知なる味わいを体験できる。
 |
 |
 |

|
 |