当館名誉館長、小野員裕と「東京カレー番長」代表みずのじんすけが2002年のカレー事情を振り替える。
また2003年のトレンド、最新情報を熱く語ってくれた!



YCM編集部: 本日はお忙しいところありがとうございます。カレー界のご意見番であるお2人に、昨年のカレー事情を振り返りつつ、今年のトレンドを予想していただきたいと思います。昨年も、全国の様々なカレーを食べ歩きされましたね。
みずのじんすけ: 東京に関していえば、新しいカレー専門店の数はそんなに増えていないですね。ただし、カフェやダイニングバーといった、カレー専門店以外の飲食店がメニューに取り入れるケースがすごく増えた気がする。フランス料理店のランチにもあったし、僕もカフェで何回か食べました。
小野員裕: リーズナブルで気軽に食べられるし、カレーが嫌いな人ってまずいないじゃない。改めて幅広いカレー人気を実感しましたね。そういえば僕も、ルノアールでも2回くらい食べた(笑)。
みずのじんすけ: ルノアールにカレーがあるんですか?!(笑)
小野員裕: うん。普通はパスタとサンドイッチしかないんだけど、カレーの激戦区・神保町だけにはあるの。まぁ、それはいいとして、昨年、全国各地を食べ歩いて僕が最も衝撃を受けたのは札幌のスープカレーだね。
みずのじんすけ: 今、すごいよね。スープカレーの人気は。
小野員裕: うん。スープカレー自体は昔からあって、僕は北海道に行くと必ず食べていた。文字通り、スープみたいにサラサラとした口当たりで、鶏肉、じゃがいも、にんじん、ピーマンといった具が、通常の3倍くらいの大きさでゴロゴロ入ってる。最初、食べたときは「何だコレ?!」って、あまりの驚きに言葉が出なかった。あんなサラッとした状態で、どうしてこんなに深い香りと旨みが出せるのか。スパイスの使い方も巧みで、かなりヤミつきになりましたよ。
みずのじんすけ: 北海道は気温が寒いせいか、ラーメンや味噌汁などの汁物文化が発達しています。ご飯と一緒に汁(スープ)を食べる習慣から、スープカレーが出来たともいわれているんですよ。今は札幌市内だけでスープカレーの店が約120店舗もあるらしい。僕も何店か食べ歩いたけど、胃にも軽くてヘルシーだし、なかなか感動的な店もありました。ご飯とカレーが別々の器で出てきて、まずはスプーンでご飯をすくい、それをスープに浸しながら食べるスタイルも斬新。某食品メーカーがスープカレーのレトルトを出したことで、全国的に認知されるようになったし、今後、関東地方でブームになるのは間違いないですね。


YCM編集部: 具体的に好きな店ってありますか?
みずのじんすけ: 個人的には帯広の「カレーリーフ」が好きですね。スープに少しとろみがあって、スパイスの香りがしっかり際立っている。
小野員裕: 僕は札幌の「インドカリー木多郎」とか、「マジックスパイス」がイチオシ。特に「マジックスパイス」は札幌では一番人気の店で、マスターの下村さんもすごく意欲的な料理人です。スパイスの薫り高さといい、スープのコク、野菜の火の通し方まですべてが素晴らしい。いつ行っても驚きがありますね。僕も今年はスープカレーが関東でブームになると確信してますよ。
みずのじんすけ: 昨年は讃岐うどんが大ブレイクしたでしょう。そこで、カレー×うどんのマッチングに目覚めた人も多かったんじゃないかな。
小野員裕: ご飯やナンと食べるだけがカレーにあらず。カレーは麺とだって相性抜群。うどんだしの効いた優しい味のカレーが、モチモチしたうどんにからんで…。いやー、これもなかなか感動的な旨さだよね。
みずのじんすけ: 僕はかなりハマりましたよ、カレーうどん。讃岐うどんの本場・香川県はもちろん、味噌煮込みうどんが進化した「カレー煮込みうどん」が流行中の名古屋にもよく通ったなぁ。「うどん家 五右衛門」(高松市)、「五十六(いそろく)」(名古屋)…、クリーミィで濃厚なカレーと麺のバランスが絶妙だし、酒飲んだ後の締めにも最高!あ~、なんか無性に食いたくなってきた!!
YCM編集部: みずのさん、落ち着いてください(笑)。さて、昨年も横濱カレーミュージアムにはたくさんのお客さまにご来場いただきましたが、全体的に見てお2人の印象はいかがでしたか?
小野員裕: どこも素晴らしくおいしかったのはもちろん、それぞれ店の個性がしっかり出ていてよかったと思います。たとえば「ハヌマーン」は4種類のスパイスで炊き上げたご飯とカレーソースとの組み合せは他のどこにもないでしょう。カレーを食べなれたマニアも、この本格的なインドの味にノックアウトされた。
みずのじんすけ: オープンキッチンのタンドール窯で、目の前で焼き上げてくれるナンや、サラダといったサイドメニューがしっかり旨いのも嬉しいですよね。なんか得した気分になる。
小野員裕: 同じインドカレーといえば、「トプカ」も最高。単に辛いだけじゃなくて、辛さに深みがあって、グイグイ引き込まれるような魅惑的な味ですね。ここの欧風タイプのキーマカレーも好きなんですよ。キーマカレーとナンを合体させた「ナンカレー」は隠れた名物メニュー。関根さんならではの発想がスゴイ。
みずのじんすけ: まさに他では食べられないココだけの味!っていう意味で、「せんば自由軒」、「パク森」もインパクトがあった。
小野員裕: 「せんば自由軒」については、僕は大阪の本店で何回も食べてるんです。現地ではカレーに興味のない人でも知っているくらい有名で、ソースをかけるとぐぐっと味が引き立つ。最初は邪道だと思っていたけれど、だんだん「これもアリだな」と思うようになってきた(笑)。ある種、麻薬的なウマさなんだよね。
みずのじんすけ: あれはカレーというより、「インディアンカレー」というひとつの料理ジャンルですよ。もはや大阪の伝統の味ですね。そうそう、「パク森」には女性の姿がすごく目立ってたと思いませんか?
小野員裕: 森さんのセンスには脱帽ですよ。ご飯の上にカレー風味の挽き肉を敷き、周りをプレーンなカレーソースで彩る。こんな美しいデコレーションは他にないよ。
みずのじんすけ: あの味は果物を相当使っていると思いますよ。甘辛くまろやかな味は、誰にでも好まれる。女性に人気が出るのも納得ですね。


YCM編集部: 今回横濱カレーミュージアムセカンドステージが始まりましたが、新しい横濱カレーミュージアムの魅力について教えていただけませんか?
みずのじんすけ: まだまだ、日本人にとってはカレー=(イコール)レトルトパックの欧風カレーがスタンダードだと思うんですよ。でも、今度のYCMはカレーに対する既成概念をガラッと変えるような楽しい仕掛けが満載です。
小野員裕: 「日本のカレーはここまで進化しているのか!」と誰もが驚くはず。新しいカレー店だけでなく、スパイスのエンターテインメント施設もあって、いろいろ楽しめるのも魅力です。
YCM編集部: リニューアルのために全国、それも山あいの奥地まで未知のカレーを求めて旅をされたと聞きました。その成果が一挙に見られるという訳ですね。
みずのじんすけ: 僕は普段から全国のクラブやパーティに出没してカレーを中心とした出張料理イベントをやっているんですけど、最近は人々がスパイスに対してすごく興味を持つようになったのを肌で感じてます。
小野員裕: 今は食品メーカーもスパイスの香りを重視したカレーを一生懸命作ろうとしてるじゃない。新陳代謝や滋養強壮とか、健康面の効能も注目されているし、スパイスのブームは絶対にキテますよ。イベントも目白押しなので、何度訪れても面白いと思いますよ。大いに期待しててください。
みずの小野: とにかく、カレーとスパイスの可能性は無限にあるということを、僕らが横濱カレーミュージアムで証明してみせます!
YCM編集部: 今からとても楽しみです。今日は本当にありがとうございました。



【みずのじんすけ】
1974年静岡県生まれ。調理師。男性4人による料理ユニット“東京カリ~番長”の代表。
都内をはじめ全国各地のクラブやパーティに参加(出没)し、年間30本以上の出張料理イベントを行う。著書「俺カレー」(アスペクト刊)「東京カリ~番長の神様カレーguide150」(文藝春秋社刊)の他、カレーCDの制作、雑誌での連載なども手掛ける。
【おのかずひろ】
1959年北海道生まれ。「横濱カレーミュージアム」名誉館長。
文筆家、出張コック、フードプロデューサーとして活躍するかたわら、日夜、カレーライスの食べ歩き、究極のカレー作りを追求している。著書「週末はカレー日和」(ぴいぷる社)、「東京カレー食べつくしガイド380/104店」(講談社)、「小野員裕の絶品カレー食べつくしガイド」(スタジオDNA)などがある。

1つ上にに戻る